医療法人社団の基金について、その特徴を13項目に分けて説明します。
(1)基金とは、医療法人社団に拠出された金銭その他の財産であり、医療法人が拠出者に対して、定款の定めるところに従い返還義務を負うものです(規則第30条の37、規則第30条の38)。基金制度を採用することにより、剰余金の分配を目的としないという医療法人の基本的性格を維持しつつ、その活動の原資となる資金を調達し、その財産的基礎の維持を図ることができます。
(2)基金制度を採用する場合は、医療法人は、制度について定款に定めなければなりません。
(3)基金を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければなりません。
① 募集に係る基金の総額
② 金銭以外の財産を拠出の目的とするときは、その旨及び当該財産の内容・価額
③ 金銭の払込み又は②の財産の給付の期日又はその期間
(4)医療法人は、募集に応じて基金の引受けの申込みをしようとする者に対して、基金の募集事項に関する通知をしなければなりません。
(5)医療法人は、申込者の中から基金の割当てを受ける者を定めて、その者に割り振る基金の額を定めなければなりません。この場合は、当該申込者に割り当てる基金の額を、申込額より減額することもできます。
(6)基金を引き受けようとする者が、基金の総額の引受けを行う契約を締結する場合(1人で基金の全額を引き受ける場合)は、(4)、(5)は適用しません。
(7)基金に拠出する現物拠出の総額が、5百万円を超える場合は、その価格が相当であるという弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(様式任意)が必要です。
(8)次に掲げる者は、(7)の証明をすることができません。
① 医療法人の役員、従業員
② 基金の引受人
③ 業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者
④ 弁護士法人、監査法人又は税理士法人であって、その社員の半数以上が①及び②に掲げる者に該当する場合
(9)基金の返還は、定時社員総会の決議によって行わなければなりません。
医療法人は、ある会計年度に係る貸借対照表上の純資産額が次に掲げる金額の合計額を超える場合は、当該会計年度の次の会計年度の決算に関する定時社員総会の日の前日までの間に限り、当該超過額を返還の総額の限度として基金の返還をすることができます。
① 基金(代替基金を含む。)の総額
② 資産につき時価を基準として評価を行っている場合において、その時価の総額がその取得価額の総額を超えるときは、時価を基準として評価を行ったことにより増加した貸借対照表上の純資産額
③ 資本剰余金の価額
(10)(9)に違反して基金の返還をした場合は、返還を受けた者および返還に関する職務を行った業務執行者は、医療法人に対して、連帯して(9)に違反して返還された額を弁済する責任を負います。また、(9)に違反して基金の返還がされた場合は、医療法人の債権者は、返還を受けた者に対し、返還の額を医療法人に対して返還することを請求することができます。
(11)基金の返還を行う場合は、返還する基金に相当する金額を代替基金として計上する必要があります。代替基金は、取り崩すことができません。
(12)基金の返還に係る債権には、利息を付することができません。
(13)特別医療法人、特定医療法人および社会医療法人は、基金制度を採用することができません。
Q&Aの最終更新日 :2012-09-04