(1)キャッシュ・フロー(以下、CF)計算書は、改正病院会計準則(以下、会計準則)で、基本財務諸表とされましたが、CF計算書には、直接法と間接法があり、(選択可だが)実務的には後者が用いられています。
CF計算書は、4区分の「+」(資金の流入)と「-」(資金の支出)の組み合わせで、基本類型は16パターンがあり、資金繰り表と異なり、“勘定合って銭足らず”状態の原因が究明できます。


そのポイントを次に示します。


① CF構造の分析・評価
 現在の貸借対照表と損益計算書だけでは、病院経営の本当の姿が見えずいわゆる“勘定合って銭足らず”という現象があり、課題を残していますが、CFシステムが導入されるとそれはどこに原因があるかが示され解決されるはずです。
CF計算書は、貸借対照表の残高と損益計算書の内容、非資金収支項目との調整により、期末に作成されます。3期間ほど並列して比較すると現金等(短期の預金などを含む)のフローがよくわかるはずです。
 CF的に見て良い経営状態とは、「+」、「-」、「-」、「+」、つまり医業活動で多くの資金を蓄積し、 投資活動(設備投資)を盛んに行い、借入金の返済も促進したが、結果「CF増減」が増加したケースをいいます。

CF計算書

1)医業活動のCF

(+利益の増加等)

(-税金の支払等)

2)投資活動のCF

(+投資回収・除却等)

(-投資支出)

3)財務活動のCF

(+借入金収入等)

(-借入金返済)

4)CFの増減

5)期首CF残高

6)期末CF残高

×××

 

 

×××

 

 

×××

 

 

×××

×××

×××


 CF計算書は、このような資金(CF)から見た経営のダイナニズムを把握することが可能であります。一方、一般的に素晴らしいといわれている「無借金経営」の病院であっても次のようなCFパターンもありえます。
(A)+,-,-,-
(B)-,-,-,-


 いずれも無借金を頼りにした衰退型で期末CFを減少させていますが、(B)のケースは医業活動そのものにも問題があり、CF経営の視点の必要性を指摘できます。


 病医院のCF計算書は、剰余金の使途が自医療施設の改善等に当てるほか、国公債もしくは確実な有価証券に限られることから、投資活動CFは限定されたものになります。


(2)CF計算書の主なポイント
① CF計算書は、病医院の資金の状況を明らかにするために、活動内容に従い、一会計期間に属するすべての資金の収入と支出の内容を記載して、増減の状況を明らかにするという目的を持っています。
② CF計算書が対象とする資金の範囲は、現金および要求払預金(当座預金等)ならびに現金同等物(以下、「現金等」)とされています。
③ CF計算書には、「業務活動によるCF」、「投資活動によるCF」および「財務活動によるCF」の区分を設けなければならないとされています。
 ア 「業務活動によるCF」の区分には、医業損益計算の対象となった取引のほか、投資活動および財務活動以外の取引によるCFを記載。
 イ 「投資活動によるCF」の区分には、固定資産の取得および売却、施設設備補助金の受入による収入、現金同等物に含まれない短期投資の取得および売却などによるCFを記載
 ウ 「財務活動によるCF」の区分には、資金の調達および返済によるCFを記載
④ CF計算書には、次の事項を注記しなければなりません。
 ア 資金の範囲に含めた現金などの内容およびその期末残高の貸借対照表科目別の内訳 
 イ 重要な非資金取引
 ウ 各表示区分の記載内容を変更した場合には、その内容
⑤ 同一開設主体のほかの施設(他会計)との取引に関わるCFについては、当該取引の実態に照らして独立した科目により適切な区分に記載しなければならないとされ、施設会計であることを明らかにしています。
⑥ 利息の受け取り額および支払い額は、総額で表示するものとします。





Q&Aの最終更新日 :2012-09-26